わきあがる湿疹の痒み


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アトピー性皮膚炎の主症状は、皮膚の湿疹病変だ。

湿疹では皮膚にブツブツができる。
皮膚が腫れぼったくなって、
急性期には小さな水ぶくれができることもある。
しばらくは皮膚がガサガサになりやすい状態がつづく。
慢性期になると、皮膚はかたく厚くなってくる。
長くステロイド薬を使っている場合には、
薬により皮膚の萎縮や毛細血管拡張がすすむため、
薄く心もとなく傷つきやすい皮膚になる。

これらの症状はみな、名状しがたい不快感をともなう。
ムズムズ、ふつふつ、ピリピリ、ちりちり、ひりひり、
ボコボコ、ざらざら、ジンジン、ズキズキ・・・
焼けるような、何とも言えない、痒みと痛み。
英語では"burning sensation"と表現したりもする。
よくぞ言ったものだと思う。

患者は、日々それに耐えている。
しかし、医師も含め周囲の人は、
その人の感覚を共有することはできない。
他人の痛みは、何年でも耐えられるのである。


なぜこんな変化が起きるのか。
皮膚の断面をミクロで見てみるとわかりやすい。

皮膚は、角層を含む表皮と、その下の真皮とに分けられる。
ブツブツでは、真皮にたくさんのリンパ球が集まって、
ふくらみを作っている。
腫れぼったいのは、表皮細胞の中や細胞間のすきまに
溜まった水の感触。
溜まりがひどくなれば、細胞が押しのけられ、水ぶくれとなる。
修復のため急いで増殖する表皮細胞は不完全な角化をし、ガサガサに。
慢性期では、表皮は厚く。
ステロイドの影響を受けていれば、表皮は薄く、
真皮内の血管は開いて充血している。

こうした湿疹による皮膚の組織の変化は、目で見てもわかるが、
他人はそれをいっしょに苦しんではくれない。
誰でも、病気に限らずいろいろな大変さを抱えているから、
他人の苦しみまで気にしていられないし、
患者としてもなるべく見られないように、または保護するために、
患部は隠す傾向にある。

リンパ球が集まる細胞浸潤も、水が滲み出る浮腫も、
炎症の所見に他ならない。
文字通り、皮膚で炎が燃え盛っているのなら、
火に焼かれる苦痛をともなうのが道理である。
けれど他人は、湿疹の美観は気にしてくれても、
苦痛を思いやってくれることは少ない。


自らの足首を出血させ、憑かれたように掻きむしりつづける幼児。
外では必死に耐えて過ごし、家で一人痒みに身悶える大人。

アトピー患者は、1年365日、痒みという鎖を引きずって歩いている。
休日になっても、どれほど倦(う)み疲れさせられても、
決して解放してくれない、重い重い鎖。

その責め苦に耐え忍びつづけている自分を、
いたわり、讃えてあげよう。
ゆっくり休みながら、無理せず暮らし、頑張れるところは頑張り、
ときには自分にごほうびも必要だ。

いつの日か、苦労が思い出になることを信じて。

2014.6.  

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