原因を考え続ける






多くの病気、そしてアトピー性皮膚炎の病態は、相変わらず全てが解明されてはいない。満足すべき根治療法もない。
医師たちはその中で、より有効な治療をと模索している。
患者もまた、そうしていくしかない。

さまざまな人が、「アトピーの原因は○○だ」という。
その理論に基づいて治癒を目指していく、私も含めて。
だがそれはその人の考え、いわば仮説であって、真実であるかどうかは後世にならないと分からないだろう。

真実でなければ意味がないと権威者は言うだろうが、私はそうは思わない。
人間は考える動物であるから、自分が必死になって何とかしたいと思っている事柄に対し、いろいろ考えを巡らすのは至極当然のことであり、それくらいの意欲と情熱のある者でなければむしろ頼りがいもない。

治療現場の苦闘のなかで辿り着いたものであるのなら、それらの考えはきっと、何がしかの真実を言いえているのではないか。
しかしながら、このアトピーという多様で複雑な病気において、それらは一面を表すのみであって、全部ではない。
だからこそ、異なったいくつもの説が同時に並び立ちうる。

できることなら、包括的な視点をも持ちたい。
そうしたら、今自分が行っている治療がどんな意味を持ち、何を期待できるものなのかが、より良く見えてくるだろう。
過剰な期待やその反動としての絶望に煩(わずら)わされるリスクを減らし、冷静でいられる助けになる。

新しい年に、皆様の健闘を祈ります。
本年も、ご愛読に御礼申し上げます。


2016.12.  




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