[猫背の子供たち]



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子供たちの姿勢がヤバい。
そしてそのまま成長してしまった10代、20代の姿勢がヤバい。
それらはさまざまな体調不良の潜在的原因になり、ひいては将来的な寿命の短縮にもつながっていくのでは、と危惧される。

姿勢については1回書いた(背筋を伸ばそう)が、これはそのパート2だ。
状況はその後悪化し続けているようだからである。
重なる部分もあるかと思うがご寛恕(かんじょ)願いたい。

背骨は脊柱とも表されるように、文字通り体を支えて姿勢を維持する大黒柱だ。
土台となる腰の骨は骨盤と呼ばれ、両わきの大きな腸骨と、それを背面中央でつなぐ仙骨からなる。
脊柱はその仙骨中央の上にそびえ立ち、頭と体の位置を保つ。

支えながらも動ける優れものなのは、1本の棒ではなく、多数の小円柱型の骨が椎間板や関節を介して縦に連続する構造だからだ。
体重を受け止めるその個々の骨(脊椎もしくは椎骨)たちは、当然のことながら下へいくほど大きく丈夫になる。
機能をまかなうのに必要にして十分な自然の造形には、まさに驚くばかり。
私たちはその優秀な作品を活かすべく正しく使えているのだろうか?

椎骨の並びは前後からみればまっすぐ、横からみては決まった方向へ前後にくねるのが正常である。
頭の下の後方からつながる首の骨(頸椎)7個が前弯(前に凸のカーブ)、肋骨が派生する胸の(胸椎)12個は後弯(後ろに凸のカーブ)して内臓の入る空間を作り、腰の骨(腰椎)5個がふたたび前弯して自然に仙骨へ連続する。
このカーブが2足歩行の人類の、重い頭をふくめて上半身の重さを効率的に支持してくれているはず、なのだが。

胸椎は胸の型枠(胸郭)の一部として肋骨に拘束されているためそうそう大きくは動けないものの、首と腰の部分は固いのが背骨だけなので、その配列には実は簡単に変形が生じてしまう。

深いソファにねそべるように座り、背中の上の方だけで寄りかかっていると、背骨全体が大きく後ろに凸のカーブになる。
(これは胎児のときお母さんのお腹の中で丸まっていたのと同じ、3才までの乳幼児の姿勢である! もしくは、老化で骨が弱く支えられなくなった老人の姿勢でもある)
パソコンやスマホを見るのに前傾姿勢になることが多くなれば、それに拍車がかかる。重い頭は、どんどん前に倒れ、首の骨は前弯でなく斜め前へまっすぐとなる(ストレートネック)。

だいたい、困ったことだけど、椅子の背もたれは人体の背のカーブに合っていないのがふつうと思った方がいい。

腰骨の高さは人によって違うので、腰の前弯をサポートするように突出させる形には作れない。汎用性がないのは商品として致命的だから。
頭の位置も人それぞれだから、高い背もたれを作るのは非常に難しい。ヘッドレストを想定して子供から大人までの頭に相当する位置をいくらか突出させようとすると、腰部がへこんで沈む形になり後弯を促進する。
くつろげる感じがして高級感があるのは、背もたれの倒れ方が強い椅子だが、作業中なら人間頭は垂直に保とうとするので、リクライニングが強いほど、首だけ前に曲げて頭を持ち上げるようになる。

椅子にもたれて座ったらまともな姿勢は保てない、と言っても過言ではない。

子供がこうした椅子に座ると、まだ脚が短いため浅く腰掛けがちになり、さらに悲惨なことになる。

無理矢理にでも足が床についている方が安定感があるのだろうか。
本を読むにも携帯ゲームをするにも、おしりは座面の前端にかろうじてひっかかっているような状態で、腰と背を大きく倒して肩でもたれかかり、手元を注視するために首を大きく前に傾ける。
そんな姿のままゲームクリア目指して長時間いそしみ、あるいは親の用事が終わるのを待って延々と時間つぶしに励む。

この状態では骨盤が大きく後ろに倒れて体重を支えられず、その直上の腰椎に大きな負担がかかっている。
将来の腰痛や椎間板ヘルニアに向かってまっしぐら。
カイロプラクターの目で見ると、まさに自爆行為としか思えない。

そうした現代っ子たちは、外遊びも十分できないでいることが多い。
使わなければ筋肉は育たないし、骨も刺激されない。
異常な姿勢を常態としたまま、彼らの骨と筋肉は成長することになり、やがてその形で成長が止まって動かなくなる。
そう、恐ろしいのは異常が不可逆的に固定化してしまうことだ。

たとえばいつも後弯でいるため1個1個の腰骨(腰椎椎体)が前がつぶれて後ろが厚めな形に完成してしまったとしたら。その1個1個の背骨の形はもう一生変えられない。
背もたれからの圧迫で胸の背骨が押し込まれるようにへこんで胸の空間を狭めてしまったとしても、体内に手を入れてそれを背中へ押し出すようなことはできない。
かがんでいる体の前側の筋肉や靭帯や膜があまり成長せず短く、引き伸ばされている後ろ側ばかりが長く成長してしまえば、その組織の長さは修正できない。

つねに後ろに倒れている骨盤を起こすのは、時間の経過とともに困難になる。
後から緊張しすぎた筋肉を手技で緩めたり、筋肉を鍛えて強く太くしたりしても矯正しきれないほどの異常が、着々と作られていく。

だからこそ、成長期、幼少期に正しい姿勢を保つことは、成長してから不調が生じたときに正しい姿勢を心がけること以上に大切なのだ。

大人の椅子にずり落ちんばかりに腰掛けてゲームをするくらいなら、うつ伏せに寝て肘をついてした方がずっといい。
自然に頭や腰を反らす形になる。
この姿勢がつらくてできないと感じるようなら、すでにヤバいかも。
なおさら、骨や関節がまだやわらかくて固まっていないうちに矯正することの重要性に気付くことだろう。

座ったときに座面に着く骨盤の突出部は坐骨結節というが、ここは大きくはあるが曲面であって、平面ではない。
だからどんな角度ででも座れる自由度を有していて、力を抜けばどんどん倒れていってしまう危険をはらんでいる。

椅子には深く腰掛ける。
骨盤は立てる。後ろに倒さない。
両側の腰骨が座面に縦に突き刺さるような感じが良い。
お腹に軽く力を入れて腰を反らし、胸を張る。
頭のてっぺんを上から吊られているイメージで。
ずっとでなくても、こうした意識を持つことで、必要な筋肉が強化され、姿勢が改善してくる。

かくいう私も若い頃の写真を見ると、驚くほど首が前に突き出していた。
はじめてカイロプラクティックに行ったとき、一見したスタッフの感想が「ずいぶん姿勢が悪いな」だった。
大勢のカイロプラクターが集まるセミナーでの首の診察でも「(あなたが)今ここにいる中で一番首が悪いんじゃないか」と言われた、筋金入りである。

悪い姿勢は身体機能の低下を促進し、当然アトピーにも悪い。
今では努力の甲斐あってかだいぶましになった。

とはいえ、スマホやパソコンなしには1日もまわらないような昨今。
参考図書を1冊お勧めしておこう。
「スマホ首があらゆる不調を引き起こす!」鄭 信義著、講談社
この中の胸鎖乳突筋を緩める方法は、正しく行えば首の骨の前弯消失と前傾にかなり有効かと思う。

デスノートのLのような姿勢の人が、テニスのサービスで首を勢いよく反らせたら、頸髄損傷で四肢麻痺、一生車椅子ともなりかねない。
原因あるところに結果あり。
現代の病理に耽溺(たんでき)するか、甘受するか、対処するか、断固回避するか。
それは個人の選択に任されている。


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